[論文発表]ユーグレナのパラミロン合成酵素の同定@FEBS Letters誌

2017年4月14日

 微細藻類ユーグレナの貯蔵多糖(パラミロン)の合成酵素を石川グループが初めて同定しました。研究成果は4月14日、FEBS Letters誌に受理されました。これは戦略的創造研究推進機構(CREST) 採択課題『形質転換ユーグレナによるバイオ燃料生産基盤技術の開発(代表:石川)』の研究成果であり、慶應義塾大学(荒川グループ)との共同研究です。

Glucan Synthase-Like 2 is indispensable for paramylon synthesis in Euglena gracilis
Yuji Tanaka, Takahisa Ogawa, Takanori Maruta, Yuta Yoshida, Kazuharu Arakawa and Takahiro Ishikawa*
FEBS Letters, 591: 1360-1370, 2017. DOI: https://doi.org/10.1002/1873-3468.12659
*corresponding author

 

研究の概要

 ユーグレナは炭素鎖の比較的短いワックスエステルを大量に生産する能力を持つため、バイオエネルギー資源としての応用が期待されています。ワックス生産は嫌気条件下で最大限に発揮されますが、このときの炭素源はパラミロンです。パラミロンはユーグレナに特徴的なβ-1,3-グルカンであり、貯蔵多糖として重要な役割を担っています。ユーグレナはこのグルカンを高蓄積し、その量は乾燥重量あたりの50%に相当します。また近年、パラミロンの栄養科学的な特徴にも注目が集まってきていますが、ユーグレナ細胞でどのように合成されるのかは不明でした。

 そこで、トランスクリプトーム解析データ(過去の記事参照)から、グルカン合成酵素と予想される遺伝子をピックアップし、その発現抑制株を作出しました。その結果、候補遺伝子の一つであるGlucan Synthase-Like 2(GSL2)の発現抑制により、パラミロン量が著しく低下し、これは基質となるUDP-グルコースの取り込み活性の低下を伴いました。これらの結果から、GSL2がパラミロンの生合成に関わることは明らかであり、パラミロンの人工合成や含有量を変化させた形質転換ユーグレナの育種などへの応用が期待されます。