[論文発表]ユーグレナのワックスエステル合成酵素の同定

2017年10月7日

微細藻類ユーグレナのワックスエステル合成酵素を同定しました。研究成果は10月7日、Scientific Reports誌にて受理されました。これは大阪府立大学(太田研究室)との共同研究で、戦略的創造研究推進機構(CREST) 採択課題『形質転換ユーグレナによるバイオ燃料生産基盤技術の開発(代表:石川)』の研究成果です。

Takuya Tomiyama, Kaeko Kurihara, Takahisa Ogawa, Takanori Maruta, Takumi Ogawa, Daisaku Ohta, Yoshihiro Sawa, and Takahiro Ishikawa
Wax Ester Synthase/Diacylglycerol Acyltransferase Isoenzymes Play a Pivotal Role in Wax Ester Biosynthesis in Euglena gracilis.
Scientific Reports, 7: 13504, 2017

下記リンクから論文ダウンロードできます。
https://www.nature.com/articles/s41598-017-14077-6

 

[概要]ユーグレナは貯蔵多糖であるパラミロンから、炭素鎖の短いワックスエステルを大量に合成する能力を持つため、未来のバイオディーゼル資源として注目されています。私たちは現在、ワックスエステル合成の分子機構と調節について調べていますが、今回の成果はワックスエステル合成酵素に着目したものです。

 この合成酵素は、他研究グループの生化学的な研究によってEgWSとして既に同定されていました。しかし私たちは、ユーグレナの遺伝子発現抑制株や酵母への異種発現系を用いた機能解析の結果から、EgWSはワックスエステル合成には関与しないことを明らかにしました。では、他のどの遺伝子が関わっているのでしょうか?最近のユーグレナ発現遺伝子データ(Yoshida et al., BMC Genomics, 2016)を用いて調べたところ、ユーグレナには6つのワックスエステル合成酵素/ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(WSD)様遺伝子(EgWSD1~6)が存在することが分かりました。これらを様々な角度から詳細に調べた結果、WSD2とWSD5が主要なワックスエステル合成酵素として働いていることを突き止めました。

 最近、ワックスエステルの分解酵素も同定することができており(栗原ら、未発表)、ワックス代謝の全容がほぼ掴めてきました。これらの解析を通して、パラミロンからワックスの合成過程で、無視できないレベルの炭素が他の脂質合成系(トリアシルグリセロールなど)やアミノ酸などに漏れていることもわかってきました。今後、いかにして炭素の流れをワックスエステルに集中させるかが、ユーグレナのバイオ燃料としての利用にとって重要だと考えています。

 ところで、ユーグレナは何のためにワックスを合成するのでしょうか?この合成は、呼吸することのできない嫌気条件で活発になります。パラミロンからワックスを合成する過程で、解糖系において基質レベルのATPが得られるため、というのが代謝生理学的な観点からの回答ですが、これは「最終産物がワックスである必要性」への答えにはなりません。ユーグレナが嫌気ストレスに晒される条件として湖底などが考えられますので、ワックスを蓄積することで比重を軽くし、酸素の豊富な湖面に浮きやすいようにしている、、、という可能性もあるかもしれません。が、実は今回、WSDの遺伝子発現抑制によりワックス合成能力を欠損させても、嫌気条件下のユーグレナの生存や応答性に何の影響も見られませんでした。結局、ワックスを合成する必要性はあるのでしょうか?これに答えるためには、実験室のフラスコ内ではなく、より自然環境を模した条件での研究が必要になると思われます。

 

 


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